信用取引について20130407

前回、前々回の信用取引についての会員のご意見

有賀様

○○です。いつもお世話になっております。

今回（および前回）の、会員の方からの問い合わせのやりとりを見ていて、
非常に危険な感じを受けました。

この方の余裕資金が現在投資されている以外にどれだけあるか分かりませんが、
潤沢に資金がある投資家なら、空売りはともかく信用買いはまず行わないはずなので、

おそらく、結構資金的には無理をしていると思われます。

この方のやりとりを見る限り、信用取引の正しい使い方が全く分かっていないといわざるをえません。
今のようなやり方を続けていると、今後大きめの調整局面がきた場合、証拠金を全て失う可能性すらあります。

私自身、信用取引を（買いも売りも）活用していますが、リーマンショックや東日本大震災時の急落も乗り切っていますので、
間違った方法でやっていないという自負はあります。

私が信用取引で気をつけている点は以下の4点です。
１．レバレッジをかけすぎない（証拠金の3倍目一杯にかけるなど論外。1.5倍でも多い。私自身はＭＡＸ1倍。）
２．逆張りをしない
３．銘柄・資金を分散させる（私の場合1銘柄につき投資資金の3％まで。）
４．損切りを必ず実行する

この方の場合、４．を実行できる能力があるかどうかは不明ですが、質問の文中の「損を出してしまいました」という
表現から、一抹の不安を感じます。
１．２．および３．についての危険性についてはやりとりを見る限りおそらく分かっていません。

有賀さんも回答でご指摘されておりますが、信用取引は「上昇トレンドの銘柄」を「短期間」投資
するために使うものです。株価がまだ上がっていない銘柄を信用取引で買って上がるのを待つ、などと
いうのはありえません。

また、信用取引をする投資家は、常に動き続ける株式市場の動きに注意し、自分自身で売り買いの判断を
瞬時に行う必要があります。
有賀さんから回答をもらって、「有賀さんの言われたとおりにしました」というのでは信用取引では生き残れません。

とにかく、この方と有賀さんのやりとりをみて、この方の行く末がとても心配になってしまいました。
他の会員の方がどうなのかは分かりませんが、銘柄選び以上に、資金管理は重要ですので、この辺りの知識・情報を
会員の皆さんで共有できればよいかなと思います。
例えば、今後開催されるセミナー、勉強会の席で、信用取引を含めた資金管理について、参加者同士でディスカッションや
意見交換を行ったり、場合によっては私が少しお話させていただければと思います。


（返信）

○○様

いつも豊富な経験に基づかれた貴重なご意見ありがとうございます。

銘柄の選択や株価の理論は体系化されたものも多いですので、
ある程度の指針は示すことができます。
しかし、現実の売買に関しては、体系化されたものもなく、
いくら分析しても、実は何も結論が出ない性格です。

そこで、経験則が重要になると考えています。
○○様がご提案されているように、セミナーでのディスカッションや
ベテランによるお話なども検討させていただきたいと考えています。

ただし、とても難しく思っていますのが、売買に関しては、
資金量や資金性格によって全くスタンスが異なる可能性があり、
十分かみ合わないことも考えられます。

例えば、分散投資に関しても、資金量が多い場合は必要でしょうが、
資金量が少ない場合は、分散投資自体が難しいと思います。
これは、物理的な面と実際の運用管理の面から言えると考えています。

つまり、1億円の以上の投資資金があり、銀行では年100万以下しか金利がつかないので、
せめて年1,000万円で回したいという場合と、
100万円の元手を数年で300万円、500万円にしたいという場合では、
自ずと方法論が変わってきます。

分散投資をするとどうしてもマーケット・プラス・アルファ狙いになります。
また、よほどうまく立ち回らないと、売った株は上がり、上がっていない故、売れなかった株が残ります。
資金量の多い前者の場合は、バイ・アンド・ホールドと、定期的なポートフォリオの見直しという手がありますが、
資金量が少ないと、そこまでその作業に時間はかけられません。

結局、分散投資をすると、マーケットリスクを受けやすくなりますので、
私自身は、マーケットリスクの小さな少数の銘柄を保有するのがいいと考えています。
もちろん、それらの銘柄は固有リスクがありますから、読みが違えば損切りする必要はあります。
しかし、少数銘柄をカバーすれば済みますので、ある程度までは論理的に納得して行えると考えています。

次に、信用取引ですが、これに関してはなかなか扱いが難しいと思っています。
最初から明らかに、時間と金利でハンディキャップを負っているので、現物より儲けにくいものです。
かつて、私が証券営業マンをしていた30数年前には、
信用取引をするのは株の売り買いが好きな本当に一部のお金に困っていない人でした。
それゆえ、楽しみで株をやっていて、損をしても困らないという立場です。


しかし、ネット時代を迎えて、普通の人でも簡単に信用取引ができるようになり、
かなり様相が変わって来たと見ています。
典型的にはFXやインデックスの売買はほぼ完全にギャンブルになっています。
個別銘柄に関してはまだましかもしれませんが、
やはりリスクコントロールという概念を理解できている人は皆無に近いのではないでしょうか。


とにもかくにも、この点に関しては、
機会があれば会員間でディスカッションできるような場を設けるようにしたいと思います。


今後ともよろしくお願いいたします。

有賀

そして、再び返信が来ました。

有賀様

○○です。ご返信いただきありがとうございます。


有賀さんのご返信の中の、「資金量や資金性格によって全くスタンスが異なる可能性があり、
十分かみ合わないことも考えられます。」というのは、ごもっともです。


ただ、それでもなお、個人投資家同士が「私はこういうスタイルで投資している」「私はこういうスタイルだ」
「いや、そのスタイルはちょっと危ないのではないか」とざっくばらんに話すことは非常に有意義だと思います。


私は、個人投資家同士で毎月勉強会を行っていますが、参加者の資金量はバラバラ、実力も投資スタイルも
バラバラです。でも、他の参加者の話を聞くことにより、私自身も投資スタイルを軌道修正させてよりよい形に持って
いくことができています。


私が考える「個人投資家のあるべき姿」は、自分自身で判断し、行動できる『自立した個人投資家』です。
人の意見を参考にすることはあっても、言いなりになっているのでは、個人投資家として成長できないし、
成功もできません。


信用取引については、私は資金の少ない人がリスク覚悟である程度の資金を作るためには都合の良いツール
だと思います。


私は個人投資家には投資資金に応じて３つのステージがあると考えています。
ステージ１：投資資金100万円
ステージ２：投資資金1000万円
ステージ３：投資資金1億円

ステージ１は、株式投資をすることは十分可能だが、資金が少ないため銘柄分散などは満足にできないレベル、
ステージ２は、銘柄分散がある程度自由にでき、資金面から株式投資が非常にやりやすくなるレベル
ステージ３は、株式投資で積極的に資産を増やすというより、大きく減らさないように守りに重点を置くレベル


ステージ３の人は信用取引をする必要はないでしょう（株が大好きな人なら別ですが）。逆に、ステージ１の人は、
できる限り早期にステージ２に移行する必要があります。そうしないと、いつまでも株式投資でまとまった資産形成
ができません。
ステージ１の投資家が富裕層のように分散投資したところで、資産は大して増えませんから。
100万円持っているステージ１の投資家が、リスク覚悟で信用取引を使えば、うまくいけば短期間でステージ２の1000万円
まで持っていけます。失敗しても100万円の損失ですからやり直しは十分可能です。


ステージ２からステージ３へ持っていくのは、多少年月はかかるでしょうが、そんなに難しくないと思います。
多少リスクを取りつつ、まともな株式投資をすれば、無理に信用取引を使わなくとも十分可能です。


逆に、いつまでも信用取引で目いっぱい張っていると、いつかは全てなくなってしまうでしょうね。ちょうど2005年の
新興市場株バブルで大儲けした個人投資家が、2006年のライブドアショック以降利益を全て吐き出したように。


個人投資家というものは結構孤独なものです。
身近に本音で相談でき、かつ的確なアドバイスがもらえる人はほとんどいないのではないでしょうか。
株式投資に対して志のある個人投資家が有賀さんを介して集まっているわけですから、これをご縁として、
私も含め、会員の皆さんが真の自立した投資家となれるよう共に研鑽していけたらと思っております。


○○