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全体相場は米国の量的緩和縮小以降冴えない動きが続いています。しかし、円安や景気回復で実態以上に買われてしまった株は厳しいものの、市場に歩調を合わせて買われたわけではなく、企業の業績実態に沿って動いていた株は、必ずしも調整している株ばかりではありません。
埼玉県を地盤とする食品スーパー・ヤオコー(8279)もそんな株の一つです。地方スーパーと聞くと、小型株というイメージがあるかと思いますが、同社の経常利益は優に100億円を超えています。
日本の食品流通市場においては、卸売業の機能が高水準であるため、海外先進国のように大手スーパーの寡占化が進むということがありませんでした。日本の食品流通の勝ち組は、卸売業の機能とマッチングが良いコンビニエンス、地域大手スーパー、ドラッグストアです。
もっとも、現状ではそれらの業態内でも勝ち組、負け組がはっきりしています。コンビニは上位3社、ドラッグストアでは加工食品のウエイトの高い企業、また地域大手スーパーは独自のマーチャンダイジングが確立した企業という具合です。
そんな勝ち組地域大手スーパーの1社がヤオコーです。バブル崩壊後の20数年間、大手スーパーの総合スーパー業態は、経営主体が変わってしまった企業も多く、生き残り企業もほとんど利益水準が変わっていません。イオン、イトーヨーカ堂でもそうです。
それに対して、同社は24期連続増益で、2000年以降の13年間でも経常利益は3倍近くになっています。
同社ではバブル崩壊後に特に専門性を高めるために「業種」ぞろえを行いました。これは、惣菜、すし、生花など専門の売り場を作ったことです。また、同時に市場のような青果売り場、オープンキッチンにした鮮魚売り場、買い物客と情報交換できるクッキングサポートコーナーなどを考案しました。
このように決して、NBやPBの加工食品を安売りするという安易な集客を行っていないことが同社の最大の強みであると考えられます。
特にこのところ同社の既存店は好調で、勢いがついてきたことがわかります。下の図からもわかるように同社の既存店はコンスタントに日本スーパーマーケット協会の平均値を上回り続けています。しかもここに来て、伸び率が加速しています。
これは同社が消費者の心をつかみ続けているということです。特に2年前から始めたFSPが功を奏しているようです。FSPとはフリークエント・ショッパーズ・プログラムのことで、消費者の消費行動を研究し、顧客特性に合わせた販売促進策を取ろうというものです。消費者の消費行動をつかむために、ポイントカードを発行し、個々の顧客の消費行動を分析する手法です。
これは米国において20年近く前に流行り、中小スーパーがウォルマートなど大手に対抗して生き残ろうという施策でして、成功した企業が何社もありました。そこで、日本でも導入機運が高まったのですが、取得したデータを分析し、販売促進に生かして初めて効果が出るものです。しかし、データ分析をおろそかにしたため、ポイントカードは単なる値引き材料となっただけの企業が多くなりました。
同社ではこれまでポイントカードは発行していませんでしたが、改めて他社とは一線を画し、FSPの本質を追求するためにカードを導入しました。その効果が継続的に出ている模様で、買い上げ点数や来店頻度などにプラスとなっているようです。
既存店好調から業績も好調ですが、いまだにPERは13倍台と低位で推移していますので、リスクの少ない投資対象と言えるでしょう。
なお、同社に関しては詳細な分析レポートを作成しています。
http://cherry100.mods.jp/ra/s/620